「転職の軸を決めましょう」。
転職活動を始めると、よくこう言われます。

でも、いざ考えてみると、「軸って、具体的に何をどう決めればいいの?」と戸惑う人が多いんじゃないでしょうか。

僕も、転職活動で一番悩んだのがこの「軸」でした。
今回は、実際に僕が転職を成功させる中でたどり着いた、転職の軸の考え方と、面接での使い方を、具体的にお話しします。

これを押さえておくと、面接での受け答えに一本筋が通って、説得力が一気に増します。

転職の軸には「本音」と「面接で伝える軸」の2つがある

まず、大前提として知っておいてほしいことがあります。
それは、転職の軸には2種類あるということです。

  • 本音の軸:自分が本当に転職したいと思っている理由
  • 面接で伝える軸:採用選考で、企業に対して伝えていく理由

この2つは、必ずしも完全に一致するわけではありません。
だからこそ、両方をきちんと用意して、場面に応じて使い分けることが大切になります。

ただし、ここで絶対にやってはいけないことが一つあります。
それは「嘘をつくこと」です。

大原則:使い分けはOK、でも「嘘」は絶対にNG

「本音と面接用を使い分ける」と聞くと、「建前で嘘をつくの?」と思うかもしれません。
でも、そうではありません。

大事なのは、面接で伝える軸も、あくまで自分の本音の中から選ぶということです。
本音にもないことを、さも志望動機のように語るのは「嘘」であり、これは絶対にやってはいけません。

嘘は、面接の深掘りで必ず見抜かれますし、仮に入社できても、後で自分が苦しむことになります。

僕の例で説明します。
僕が転職したい本音の理由は、正直に言うと「彼女と同棲したいから」が一番上にありました。

でも、これをそのまま面接の中心軸にするのは、さすがに弱いですよね。

そこで僕は、本音の軸の中で「同棲」の次点にあった理由に目を向けました。
それが、「仕事のやりがい」「自分が貢献できるかどうか」「感謝される仕事かどうか」といったものです。

これらも紛れもなく自分の本音だったので、それを面接の中心軸として伝えていきました。

つまり、嘘はついていない。
本音の中から、面接にふさわしいものを選んで前面に出した

これが「使い分け」の正しい姿です。

転職の軸を決める「順番」

では、具体的にどうやって軸を決めればいいのか。
僕が実践した手順を紹介します。

順番に進めるのがポイントです。

ステップ1:本音の軸を、一通り全部出してみる

まずは、自分が転職したい本音の理由を、思いつく限り全部書き出します。
この段階では、きれいごとも、人に言いにくいことも、すべて出してOKです。

そもそも「軸」とは、どんな企業に転職したいのかを決める、自分なりの判断基準のことです。

「どんな会社で働きたいか」を具体的に考えていくと、いろいろな条件が出てくるはずです。
たとえば、こんな感じです。

  • 年収が低いから、上げたい
  • 勤務地を、地方から首都圏に変えたい
  • 営業から、ITエンジニアになりたい
  • もっとお客さんと関わる仕事がしたい
  • 今は残業が多いので、少ない企業がいい
  • 土日休みがいい

「同棲したい」「年収を上げたい」「やりがいが欲しい」「今の職場が合わない」など、正直な気持ちを並べていきます。

大事なのは、この段階で頭の中にあるものを、一度すべて書き出してしまうこと。
書き出すことで、自分が本当は何を求めているのかが、はっきり見えてきます。

ステップ2:出した軸に、順位をつける

次に、書き出した軸に順位をつけます。
「今回の転職で、自分は何を一番重要視するのか」を考えて、優先順位を明確にしていきます。

なぜ順位づけが必要なのか。
それは、書き出した軸が、すべて叶う可能性は高くないからです。

年収も、勤務地も、職種も、休日も、残業の少なさも——。
そのすべてを100%満たす企業は、なかなか見つかりません。

だからこそ、軸に順番をつけて、どこまでが譲れなくて、どこからは妥協できるのかを、自分の中で整理しておく必要があります。

僕がおすすめするのは、軸を次の3段階に分ける方法です。

  • 必ず叶えたい:これがないなら転職する意味がない、という絶対条件
  • できればあった方がいい:叶えば嬉しいが、なくても許容できる条件
  • 最悪なくてもいい:あれば理想だが、妥協してもいい条件

こうして3段階に分けておくと、企業選びの軸が、ぐっと明確になります。
「必ず叶えたい」を満たす企業に絞れば、応募先選びで迷わなくなります。

この順位づけが、転職活動全体の判断基準になります。
複数の内定で迷ったときも、この優先順位に立ち返れば、自分にとってベストな選択ができます。

ステップ3:面接で使う軸をピックアップする

順位づけができたら、その中から面接で前面に出す軸をピックアップします。
先ほどの僕の例のように、一番の本音が面接向きでない場合は、
次点以降の本音の中から、企業に伝えるべき軸を選びます。

繰り返しますが、ここで選ぶのは、あくまで「本音の中にあるもの」です。
本音にないことを作り出すのではなく、本音の優先順位を入れ替えて見せる、というイメージです。

各軸で「自分のエピソード」を語れるようにする

面接で使う軸が決まったら、もう一つ必須の準備があります。
それは、それぞれの軸について、自分の具体的なエピソードを語れるようにしておくことです。

軸は、ただ「やりがいを求めています」と言うだけでは、まったく説得力がありません。
「なぜそう思うのか」を、自分の実体験で裏付けて初めて、相手に響きます。

たとえば、「年収」を軸の一つにするなら、こんな風に語れるよう準備します。

「前職では、〇〇という業務で会社の売上に△△%貢献していました。
その実績から考えると、一般的にはもっと評価されてよい仕事をしている自負があります。

だからこそ、自分の市場価値に見合った環境で働きたいと考えています。」

このように、具体的な数字や事実(貢献度、実績)とセットで語ると、軸に説得力が生まれます。
単なる希望ではなく、「根拠のある主張」になるんです。

どの軸を選ぶにしても、「それを裏付ける自分のエピソード」を必ずセットで用意しておきましょう。

軸を考えるときの注意点:ネガティブな印象にしない

最後に、軸を考えるうえで、絶対に気をつけてほしいことがあります。
それは、軸をネガティブな印象にしないことです。

転職を考える理由は、正直なところ「今の職場への不満」から始まることも多いと思います。
でも、それをそのまま面接で口にすると、「不満ばかり言う人」「他責的な人」という印象を与えてしまいます。

大事なのは、ネガティブな本音を、ポジティブな表現に変換することです。
見方を変えるだけで、同じ気持ちもまったく違う伝わり方になります。

  • 「前の仕事が嫌だった」→「どんな仕事が自分に向いていると気づいたか
  • 「今の職場が合わない」→「自分はどんな環境でこそ力を発揮できるのか
  • 「評価されなかった」→「前職でどんな点に自分の良さを感じたか

たとえば、前職への不満が出発点だったとしても、それを「その経験を通じて、自分はこういう仕事に向いていると気づいた」「自分のこういう強みを活かせる環境で働きたい」と前向きに語れば、印象はまったく変わります。

不満を不満のまま伝えるのではなく、その経験から得た気づきや、自分の強みの発見に変換する。
これができると、軸が一気に魅力的になります。

まとめ:本音から選び、エピソードで裏付け、前向きに伝える

転職の軸の考え方を、まとめます。

  • 転職の軸には「本音の軸」と「面接で伝える軸」の2つがあり、使い分ける
  • ただし、面接で伝える軸も必ず「本音の中から」選ぶ。嘘は絶対にNG
  • 軸を決める順番は「全部出す→順位づけ→面接用をピックアップ」
  • 各軸は、自分の具体的なエピソード(数字・実績)で裏付ける
  • ネガティブな本音は、前向きな気づきや強みに変換して伝える

転職の軸は、面接対策のテクニックであると同時に、「自分は何を大切にして働きたいのか」を見つめ直す作業でもあります。
ここをしっかり固めておくと、面接での説得力が増すだけでなく、転職後の後悔も減ります。

嘘のない本音の中から軸を選び、エピソードで裏付け、前向きに伝える。
この3つを意識すれば、あなたの転職活動は、きっと一本筋の通ったものになるはずです。

まずは、自分の本音を全部書き出すところから始めてみてください。